森のゼロ戦物語
プロローグ 鉄からみた日本の近代化と平和教育

【森のゼロ戦物語】

ウンコチャンズ = ゼロ戦パイロット?

カチカチ・・・ さあ始るよ〜
たたらの森に隠れてる「ウンコチャンズ」の話しだよ〜
カナクソって何かな〜
ゼロ戦も出るよ〜


自己紹介 木漏れ日



ヤッホ〜
私の名前はカナメちゃん、隠れているのはカナクソくん。
2人合わせて「ウンコチャンズ」 宜しくね〜
これから始まるのは、
むかし、むかし、森の中で作られていた「スゴーイ鉄」のお話です。
ウンウン
その様子を描いた、「絵巻物」を見てみましょう。

江戸時代の操業 加計隅屋鉄山絵巻



その1、子供向け

チン♪ さて、お勉強です。
広島に保存されている「加計隅屋鉄山絵巻」は、
江戸時代の「たたら製鉄」という鉄作りを描いた珍しい絵画です。
粘土で作った四角い炉の中に、
木のスコップを使って、上から、砂鉄と木炭をカワリバンコに投入、
大きな炎が燃え上がって、もの凄く熱いです。
フンドシ一丁の人が乗っているのは、フイゴという送風機で、
シーソーのようにカワリバンコに踏みながら、たくさんの空気を送っています。
良〜く見ると、竹の送風パイプがあり、
その後には「鉄の神様」が祀ってあります。
炉の下の穴から赤く流れ出ているのが「鉄」で、やがて冷えて固まります。
チン♪ 質問ありますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
では、実際に「たたら製鉄」があった場所を見てみましょう。



その2、大人向け

絵巻物の実物画像(外観)

加計隅屋鉄山絵巻 (広島県重要文化財)

江戸後期に、国内でも最大手の鉄山師に成長した加計隅屋が残した絵巻物で、
上巻(天地25cm、長さ6.4m)下巻(長さ8.5m)からなる。

たたら製鉄の作業工程として、
森林伐採、炭焼、たたら操業、ヒ出し、大鍛冶、勘定場、各種道具を写生しているが、
何処のたたら場を描いたのかは特定されていない。

作者の佐々木古仙斎は、江戸末期1794年生まれで、
芸北大暮の鍛冶屋の出とされる。

草稿本(下絵)として描かれたものだが、
それゆえの伸びやかな筆さばき、文章、労働者の所作の正確さへの評価が高い。

本画は原爆で焼失したものの、
日本独自のたたら製鉄の学術的な資料として、世界的にも大変貴重な絵画である。



1・操業風景

高殿(たたら吹屋)内部の暑くて過酷な操業風景。

マサ土で作った炉の中に、上から砂鉄と木炭を交互に投入し、
鞴からの送風によって激しく燃えているところ。

左右に設置された天秤鞴は大型であり、
番子が交代で踏むところが、カワリバンコの語源となる。

炉の下部から流れ出ているのが銑鉄(ズク)である。

村下は統括責任者であり、
炭を準備しているスミタキ、背後に金屋子が祀られている。




2・ヒ(ケラ)出し風景

操業を続けると炉のマサ土が融けて、だんだんと痩せてくる。

最後に炉を破壊したあと、中心部に生成されたヒを野外に引き出し、
鉄池に落として冷やしているところ。

池の水が沸騰するほどの熱量である。

屋根の排煙口や防火用水や梯子、ヒの下に敷くコロバシ木や鎖、
鉄屑を拾う子女、飼犬がいる。



3・大鍛冶風景

炉から出された銑鉄やヒを、割りながら選別したあと、
再加熱して、叩き鍛え、脱炭し、用途に合わせて品質を整えているところ。

リーダーの大工、右利き左利きを交えた4名の手子のチームワークが重要であり、
鉄棒にして出荷される。

加計まで馬で運ばれ、積出し港から川舟で太田川を下り、
さらに、瀬戸内海を大坂へと渡り、「山県割鉄」として全国に流通した。

砂鉄採取(カンナ流し)

砂鉄は、中国山地一帯のマサ土に約3%含有し、
水勢と比重を利用しながら選別したもので、大量の残土が川に流された。

それは、棚田や、広島デルタの生成と密接な関係がある。

太田川水系での砂鉄採取は、
洪水による氾濫防止のために、広島城の築城に合せて全面禁止された。

のち、砂鉄は石見などの山陰側から馬で運ばれ、
砂鉄の採取と運搬は、農家の農閑期の副業であった。

水梨たたら跡 カナクソ



お〜い!カナクソくん。 こっちにおいで〜
ここで「たたら製鉄」やってたのよ。
砂鉄から鉄を作る時に出てくる「不純物」がカナクソです。
たたら製鉄があった場所の地面を掘ると、
捨てられた「カナクソ」が、たくさん出るのよね〜
ウンウン
たくさんのカナクソが残っているということは、
良い鉄がたくさんできたということなのよね〜
ウンウン
少し、まわりをトレッキングしよう♪

蛇杉橋 豊かな森



ヤッホ〜
豊かな森に包まれて、川には大きな岩がゴロゴロ・・・
耳を澄ませば、いろんな音が聞こえるわ!
ザワザワと葉っぱが揺れる音・・・ 鳥の声・・・
ウンウン
だんだんと大きな岩が迫ってきたわ!

猿飛 岩・渡し船



ワオ!
岩の割れ目を、川がゆっくりと流れている。
さあ、船に乗るわよ。 ユレルユレル・・・
狭くて、通るのがやっと・・・
見上げれば、おサルがジャンプしてるわ!
もっと、もっと歩けば・・・ 
ゴーゴーと水の音がしてきたわ!

三段滝



わーー ここは「三段滝」。
大きな滝が三つも重なっている! ホップ、ステップ、ジャンプ!
もっと、もっと歩けば・・・ 海は広いな大きいな〜♪

聖湖 眠り



ここは、海じゃなくて「湖」。
こ〜んな綺麗なところで「鉄」を作っていたのです。
でもね。江戸時代が終わり、
明治時代になると「たたら製鉄」は消えて無くなりました。
ゴミのように捨てられたカナクソは、
土の中や、湖の底で、静かに眠っていたのです。
しかし、その後に大事件が起こった! ズンドコドコドコ・・・

三段滝 カナクソ復活



捨てられたはずのカナクソが甦った。
捨てられたはずのカナクソが掘り出され、運ばれ始めた。
いよいよ「ウンコチャンズ」の大活躍が始まります!
大きな煙突が伸びて、伸びて、パワーアップ!

10 大暮工場跡 角炉



芸北に大きな製鉄工場が出来た!
捨てられたカナクソを集めて焼いたら、「スゴーイ鉄」が生まれたのです。 ズンドコドコドコ・・・
その鉄は、硬くて丈夫だったので、特別な使い方がされました。
明治時代は「産業革命」の始まりです。

11 産業革命 八幡製鉄所



チン♪ さて、ここでまたお勉強です。
日本は、明治なって突然に西洋との交流が盛んになり、
たたら製鉄から、西洋高炉へと、一気に技術が進歩ました。
やがて、北九州に国営の「八幡製鉄所」が建設されました。
火力の強い石炭が、近くで採れるし、
外国から鉄鋼石を輸入するために、海に近かったからです。
ところが、鉄板を延ばすために、丈夫なローラーやベアリングが必要となり、
そこに、カナクソから再生した「スゴ〜イ鉄」が使われたのです。
最初はなかなかうまくゆきませんでしたが、
それでも日本は、もの凄いスピードで、「西洋式の鉄」が作れるようになりました。
いわゆる「近代化」といわれるもので、
捨てられたカナクソが再利用できたのも、西洋の技術を応用したからなのです。
チン♪ 質問ありますか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

12 戦争勃発 鉄の枯渇

戦車、大砲、軍刀、ヘルメット、戦火

チン♪ さて、これからは、戦争の話です。
産業革命が始まってから、日本は、中国やソ連と戦争をしました。
ヘルメットや刀、鉄砲や戦車を作るのに、
たくさんの鉄を使うので、「八幡製鉄所」は大忙し・・・
それでもなんとか頑張って勝利しました。
しかしその後も戦争への流れは止まらず、
さらに大きな世界大戦に突入し、アメリカと戦うことになりました。
最初は強かった日本ですが、
石油などの資源がないので、だんだん負けてゆきました。
やがて、武器を作るための「鉄」までも無くなってしまい、
とうとう国民は、自分の家で使っていた鍋釜や包丁まで、差出したのです。

13 ゼロ戦 空中戦

空中戦

日本が世界に誇ったゼロ戦は、スピードが早くて、宙返りが得意で、
最初の頃は大活躍したのですが・・・
操縦席にパイロットの命を守る防弾鉄板がなく、
機体が軽くて、急降下できないという弱みを、敵に知られてしまいました。
「隊長!このままでは優秀なパイロットがみんな死んでしまい、
ゼロ戦も全滅します。」
「解っておる。今、作戦会議中じゃ!」
そこで、軍部は大慌て・・・ 改良型のゼロ戦を考え始めたのです。
そんなこんなで、山の中の製鉄所は、まだまだ忙しそうなのです。

14 帝国製鉄 戦争特需



その頃、カナクソを再利用していた製鉄工場は、
加計というところに引越していて、さらに大きくなっていました。
カナクソを焼いた「スゴーイ鉄」に目を付けた軍工場から、
大増産の命令があり、突如、降って湧いたような忙しさに見舞われたのです。
「急な話じゃが、この戦争に負ける訳にはいかん。」
「カナクソを掘るのも大変、木炭を作るのも大変じゃが、やるしかないで。」
「お国のためじゃ!ゼロ戦のためじゃ!」「ほうじゃ!ほうじゃ!」
捨てられたカナクソが、もっともっと必要になりました。

15 カナクソ堀り 総動員

山奥での重労働、坂道を押される木炭車(カナクソ満載)

「こんな大山奥のカナクソまで拾ろーて、ホンマに戦争に勝てるんかのう?」
「これから、どーなるんかね?」
お父さんも、お母さんも、老人も、子供も、家族総動員で、
たくさんのカナクソを掘り出しました。
原生林ではたくさんの木がダイナマイトで倒され、焼かれて木炭をとなり、
製鉄所でカナクソを溶かす燃料となりました。
「ガソリンが無いぞ〜 木炭で走るトラックは馬力が無いぞ〜」
「皆で押してくれ〜」
「食物ないぞ〜 腹減ったぞ〜」
「皆で押してくれ〜」
「エンヤコラ〜 エンヤコラ〜」
ゼロ戦のパイロットの命を守る防弾鉄板に、カナクソが使われたのです。

16 原爆ドーム 終戦

原爆ドームや戦艦大和のシルエット、敗戦の影

皆で一生懸命に頑張ったけど・・・
「第二次世界大戦」は、結局、日本が負けてしまいました。
勝っても負けても・・・
たくさんの人の命が奪われ、たくさんの街が焼かれるのが戦争というものです。
原子爆弾や、戦艦大和や、特攻隊の話しは有名ですが、
広島の「カナクソ物語」を知る人は、地元でも殆どいなくなってしまいました。
ところで「ウンコチャンズ」は、今頃どうしてるんだろう?

17 丸いカナクソ 風化



ヤッホ〜
私たちは、今でも元気です。
あれから長い時間が過ぎて、雨が降ったり止んだり・・・
残されたカナクソは「たたらの森」から流れ出し、
河原の石コロに混ざって、バラバラと転がっています。
丸〜るく、小〜さく、なってしまいました。
「捨てられ、再利用され、残された私たちは、
いったい何のために生きてゆけばいいのでしょう?」
ウ〜ン ウ〜ン
「そうだわ!私たちの故郷に帰ってみようよ!」 ウンウン

18 神木 祈り



「三段峡たたらの森」の奥深く、
枯れて倒れそうなお婆さんの木があります。
それは昔、「たたら製鉄」で働いていた人達が、
鉄がうまく出来ますようにと、毎日祈っていた木の神様!
手を合せ、目を閉じて、静かに感じてみよう!
森はつながっている! 森は回っている!
みんな! 「たたらの森の仲間たち」になろうよ!
恥ずかしがりやのカナクソくんも待ってるしね。 カナメちゃんは、
森のことばかり考えるから、
頭から芽が生えたんだね。
あれ? 僕にも少し生えてきたぞ!
平和っていいね!