龍姫湖おろち伝説 〜 愛の呪文
 日本書紀によると、スサノオは安芸の国の可愛(えの)から、出雲に向かう途中でヤマタノオロチを退治したとの記述があります。オロチは製鉄民と解釈でき、広島が”たたら製鉄”の一大産地であったことが、芸藩通志や民話からも読み取れます。温井の渕から、出雲に向かったオロチは、温井ダムの完成によって広くなった龍姫湖に戻っています。何故なら、当時の広島のたたら製鉄が、いかに先進的であったかの”証拠”が、考古学調査や古文書から明かされ始めたからです。湖面を流れる朝霧や、ダムの放水に向けて、”愛の呪文”を唱えれば、真実の扉が開かれることでしょう。


加計の民話伝説〜岩の巻


龍姫湖おろち伝説〜愛の呪文  文・絵 いくまさ鉄平 (まち物語制作委員会)
 1

NA)  この紙芝居は、温井ダムの「龍姫湖」の底に沈んだ民話をもとに、
     作り直しました。

     ”炭焼き男甚六”と、”旅人オチヨ”の、悲しくも美しい”愛”の物語です。

     ここは温井の山の中・・・


お千代) 「やっほ〜 甚六ちゃん〜 こっちよ〜」

 2

甚六)  「ふんぎゃ〜〜〜〜」

お千代) 「何をそんなにビックリしてるの?」

甚六)  「バ、バケモノが、 しゃ、 しゃべった!」

お千代) 「失礼ですね。 アタシは見てのとおりの龍ですよ。」
      「甚六ちゃんは、龍を見たことないの?」

甚六)  「神楽のオロチなら、知っとるが、ホンモノは初めてじゃ。」

 3

お千代) 「アタシの名前は、”リューチェル・オチヨ・カネモチーヨ”」
      「日本名”お千代”と申します。」

甚六)  「遠くから来たのか? 沖縄か? イタリアか?」

お千代) 「甚六ちゃんのお嫁さんにピッタリな名前でしょ。」

      「アタシの結婚相手は、”温井の炭焼き男の甚六”だと、
       3000年も前から決まっているの。」

甚六)  「お、お前、龍じゃろ。 龍と人間が一緒になることは出来ん。」

 4

お千代) 「甚六ちゃんは、頭が固いのね。
       これからはジェンダーなので、フレキシブルに対応しないとね。」

甚六)  「はあ?」

お千代) 「まあ、そんなことより結婚しましょ。 そうしましょ。」

甚六)  「ワシは認めんぞ、絶対に認めん。」

お千代) 「だったら、甚六ちゃんに、面白いものを見せてあげるわ。」

NA)   お千代が抱えているズタ袋の中から、黒い石が顔を出しました。

 5

NA)  これは、たたら製鉄の時に出てくるカナクソが、
     山から転げて、川に流されて、コロコロと丸くなったものです。

     ”カナメちゃん”と言われています。

お千代) 「甚六ちゃんが、欲しいのは、お金でしょ。 だったら、リサイクルですよ。」

      「甚六ちゃんの炭焼き窯で、赤くなるまで焼きあげて、呪文を唱えましょ。」

甚六)  「呪文??」

 6

お千代) 愛する甚六ちゃんだけに、教えてあげるわ。
      「タッタラバ〜、タッタラバ〜、タタラバタタラバ♪」

甚六)  「タッタ、タッタ? 何がタッタんか?」

お千代) 「いいから、炭焼き窯に火を熾してちょうだい。」

 7

NA)   甚六は、ぶつぶつ文句を言いながらも、炭焼きの窯に火を熾し、
      カナメちゃんを投げ入れました。

      小さなフイゴで風を吹かせると、どんどん温度が上がってゆきます。

甚六)   ゴー ゴー ゴー

お千代) 「甚六ちゃん。 そろそろ始めるわよ!」

      「タッタラバ〜、タッタラバ〜、タタラバタタラバ♪」

 8

NA)   するとどうしたことでしょう。 真っ赤なカナメちゃんが、ピカピカと輝きはじめ、
       しだいに小判に姿を変えていくではありませんか。

お千代) 「タッタラバ〜♪」

甚六)  「な、な、なんじゃこりゃ〜 丸いカナクソが、小判に生まれ変わったぞ。」
      「えらいこっちゃ。」

 9

お千代) 「これで、お金持ちになりました。 結婚しましょ。 そうしましょ。」

甚六)   「う〜ん・・・」

お千代) 「まだ何か不満ですか?」
      「煮え切らない甚六ちゃんも大好きよ。 言ってごらん。」

甚六)  「ワ、ワ、ワ、ワシは、結構、メンクイかもしれん。」

お千代) 「やっぱり、ルックスね。 かしこまりました。」

NA)   お千代は、また呪文を唱えたかと思うと、
      なんとも可愛い女の子に姿を変えたのです。

   10

NA)   でも、少しヘンでした。

お千代) 「ど〜お! いいでしょう?」

甚六)  「う〜ん、頭からツノが生えてるし・・・ う〜ん、お尻にシッポがあるし・・・」

お千代) 「甚六ちゃん好みに、もう一度手直しするけど、ツノは許してね。」
      「甚六ちゃんのためなら、怒るときもありますよ。 はっ、はっ、は〜」

 11

NA)  やがて、甚六とお千代は、結婚式を挙げました。

     ハネムーンは三段峡と井仁の棚田、
     帰ったらすぐに、家をリニューアルして、セレブな暮らしが始まりました。

     風炎窯の耐熱皿に、見浦牛のステーキ。
      戸河内ウィスキーに、チョコちゃん。
       吉水園の茶道に、温井スプリングスの露天風呂。

     朝寝、朝酒、朝湯の毎日に、なりました。

     貧乏だった甚六の変わりようは、
      毎日のように、村の井戸端でスクープされています。

 12

村女1) 「ねえ、お千代さんのこと。 何かヘンだと思わない?
       今日も甚六は仕事をサボってるし。 妙にお金があるみたいだし。」

村女2) 「あのね。 お千代さん、可愛い顔して”バケモノ”かもしれないわ。
       この前、カネモチーヨ、カネモチーヨと、からかったら、怒ったのなんのって。」

 13

村女2) 「振り向いたと思ったら、ぐわ〜! と、襲いかかってきたのよ。 真っ赤な顔して。」
      「ワタシの首をつかんだ両手が、氷のように冷たかったわ。」

村女1) 「そりゃあ、いびせーわ!」

 14

村男1) 「おい、甚六のやつ。 何だかヘンだと思わんか?
       そもそも、あの可愛い嫁さんは、どこから来たんじゃ?」

村男2) 「誰にも言うな。 ワシはの。 お千代さんの裸を見てしも〜た。
       月夜の明るい晩で、はっきりとシルエットが、照らし出されたんじゃ。」

村男1) 「そっ、それで。」

 15

NA)   nnnnnnnnnnnn (タブー♪)

村人2) 「チョットだけじゃったが、背中には、タトゥーなウロコが輝いていたんじゃ。
       美し過ぎて、怖いくらいじゃった。」

村人1) 「いびせーのう! そりゃあ、山賊のアネゴかもしれんぞ。」

・・・・・・・・・・

甚六)  「おんどりゃあ〜 何の話しじゃ。 お前ら、お千代の裸を見たんか?」

 16

村人1) 「ぎゃ、 甚六がおった!」

村人2) 「いや、その・・・ すまん。 仕事を思い出した・・ 逃げろ!」

甚六)  「お前ら、つまらん噂、しよったら承知せんどお〜」

NA)  なんとかその場をしのいだ甚六ですが、噂が噂を呼び、
     やがて、村人の誰もが、お千代は”バケモノ”だと思い始めたのです。

 17

お千代) 「お〜い。 甚六ちゃん。 アタシはもう、ここには住めないわ〜」
      「安芸太田は狭いです。 ヨソモノには、キツイわ〜」

甚六)  「で、どうするんじゃ?」

お千代) 「甚六ちゃん、ごめんね。 これから、出雲に旅立つことにしたの。」

甚六)  「ワ、ワシはどうすればええんじゃ?」

お千代) 「出雲に行けば人間の姿でいることはできません。 お金もないし・・・」
      「甚六ちゃんが、それでも良いのなら、追いかけてきて欲しいわ。」

      「骨まで愛してるわ。」

 18

NA)  お千代は、そう言い残して温井の渕にジャンプして、
     銀色のウロコを輝かせながら、水の底へ消えてゆきました。

甚六)  「ワ、ワシは、これから、どうやって生きていけばええんじゃ〜」

NA)   ”炭焼き男の甚六”と、お千代こと、”リューチェル・オチヨ・カネモチーヨ”の、
      その後の運命は如何に???

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

      翌日、温井の渕には、”大きなヘビの抜け殻”が、ひとつ、落ちていましたとさ。

 19

NA)  現在、この場所には、”小さな神社”があります。

      ”難関突破”、”安産”の、ご利益があるのですが、
      これに、”恋愛成就”を加えましょう♪

      何故なら、温井ダムが出来たことで、広くなった湖に、二人は戻ってきています。

     湖面を流れる朝霧や、ダムからの放水を眺めながら、
     ”愛の呪文”を唱えましょう。

     タタラバ、タタラバ♪

     おわり。

挿入歌) 骨まで愛して 城卓也   恋の奴隷 奥村チヨ 

     お知らせ。

     只今、
     加計インターチェンジから温井ダムの10kmを、トリップエリアゲートに設定しています。

     日帰りや一泊程度の小旅行を想定し、アクティブ体験や宿泊施設を、
     スマホで簡単に確認でき、即予約できるというものです。

     コンセプトは”愛の呪文”と”ホンモノ体験”

     WEB検索してくださいね♪